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コンピュータの基礎第12講
通信ネットワーク

【第12講のポイント】
 インターネットの発展にともない、コンピュータの役割は「計算機械」から「通信機械」に変化している。本講では、通信に関する基本的な概念を理解するとともに、インターネットの仕組みについて学ぶ。

【第12講の目標】学習後、以下のことが身についたかチェックしよう。
  1. 通信に関する基本的な概念・用語を理解する
  2. 通信速度と情報品質の関係について理解する
  3. インターネットの仕組みを理解する
  4. 次の言葉の意味がわかる
    LAN、TCP、IP、IPアドレス、DNS

【第12講の構成】
  1. 無線の周波数と直進性
  2. 通信速度と情報品質
  3. LAN
  4. インターネットとは
  5. TCP/IP

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この教科書はBookletを利用して作成しています。

第1節 無線の周波数と直進性

 波の周波数(毎秒の振幅回数, Hz)と波長(1回振幅した時に進む距離, m)には、次の関係が成立つ。
周波数(Hz)×波長(m)=波の秒速(m/s)
無線(光)は秒速約 30 万キロメートルだから、例えば周波数 1GHz の電波の波長は、次式で求まる。
300,000Km/1G(Hz)=300,000,000m/1,000,000,000(Hz)=0.3m=30cm
 また、アンテナの長さは波長の1/2が一番効率が良い。例えば、1GHzの電波のアンテナは15cmにすると一番効率がよい。

*問12.1. (ヒント)
  1. 波長 3m の電波の周波数を求めよ
  2. 周波数 3MHz の電波の波長を求めよ
  3. 周波数 2.5GHz の電波(携帯)のアンテナは何cmが一番効率がよいか

 電波は周波数によって分類されていて、用途が分けられている。一般に波は波長が短い(周波数が大きい)ほど直進性が高く、波長が長い(周波数が小さい)ほど、山や建物を超えて(回り込んで)到達する。

問12.2.電波の周波数による分類を調べ、次の電波の特徴と主な用途を述べよ (ヒント)
  1. 極超短波
  2. 短波
  3. 中波

第2節 通信速度と情報品質

通信速度は bps(bits per second, 毎秒のビット数)で測られる。

主なサービスに必要な通信速度
内容サービス(必要通信速度)
音声携帯電話(8Kbps)、固定電話(32Kbps)、IP電話(100Kbps)、音楽(320K~25Mbps)
動画TV電話(32Kbps)、デジタル放送(15Mbps)、スーパーハイビジョン(118Mbps)

代表的な通信形態と通信速度(実際の状況によって異なる)
形態通信速度備考
ADSL上り:512Kbps~5Mbps、下り:1Mbps~47Mbps電話回線を利用
VDSL上り:30~100Mbps、下り:100Mbps光ファイバー+建物内電話線
FTTH100Mbps~1Gbps光ファイバー
ケーブルテレビ1~160Mbps
無線LAN11Mbps、546Mbps
携帯電話(3G)数Mbps~14Mbps

*問12.3. (ヒント)
  1. 1Mbps の通信速度で、10MB(メガバイト)のデータを受信するのに何秒かかるか
  2. 1Mbps の通信速度では、どのような情報(サービス)がリアルタイムで利用可能か。
  3. 自分のインターネットの接続形態を調べ、報告せよ。
  4. 通信速度測定サイトで自分の環境での通信速度を調べ、報告せよ。

第3節 LAN

 LAN(Local Area Network)は、組織や建物(あるいは家庭)内のコンピュータネットワークである。方式(規格)によって、色々なコンピュータの繋げ方(ネットワークトポロジー)がある。

繋げ方説明通信制御法
バス型各端末を1本の同軸
ケーブルに繋げる
ケーブルが空いていれば送信
空いてなければ一定時間待ち再送信
リング型各端末を環状ケーブル
(リング)に繋げる
リング内を回るトークンを捉えたら送信
送信終了後にトークンを解放
スター型各端末を1台のルータにLANケーブルで繋げるルータが集中管理
無線LAN各端末を1台のルータに無線で繋げる端末・ルータは一定時間経過後に送信
受信者の肯定応答がなければ再送出
注.バス型や無線LANでは、接続端末数が多くなり回線が込み合うと、極端に通信速度が低下する。

問12.4.以下は通信制御方式の比喩による説明である。対応する組み合わせを示せ (ヒント)
  1. バス型
  2. リング型
  3. 無線LAN

  1. 相手が聞いているか確認しながら話す
  2. マイクを持った人だけが話す
  3. 誰も話していなければ話す

第4節 インターネットとは

歴史

以前遠隔地の高性能コンピュータを通信回線経由で手元の端末から利用していた
1969ARPAネット:アメリカ西海岸の4大学のホストコンピュータを24時間相互接続した
メール・ニュース・掲示板等文字ベースの機能が提供された
1984JUNET:東大、東工大、慶応大のコンピュータを相互接続した
1990アメリカで商用利用が解禁された
1992WWWが始まり、リンクを含むWebページ(ハイパーテキスト)が提供され始めた
1993ブラウザが登場し、画像等を含むWebページの閲覧が可能になった
日本で商用利用が解禁された
2009日本のインターネット利用者が9408万人、人口普及率78%になった
2014日本のインターネットのスマホでの利用が増加。2013年4月からの18ヶ月で、PC利用は5700万人から700万人減少し、スマホ利用は2900万から1500万人増加した

参考;インターネット白書(1996~)

問12.5. (ヒント)
日本でインターネットの商用利用が可能になって今年で何年か

パケット通信

 インターネットを支える技術の1つがパケット通信である。電話回線のように、データ通信中の2台がその間の回線を占有してしまうと、他の者は回線が空くまで待たされ、非効率である。
 パケット通信では、データを(小定量)パケット(小包)に分けて送信する。通常、インターネットのパケットサイズは 1500B(バイト)で、携帯のパケットサイズは 128B(バイト)である。パケットが回線を使用する時間はごく短時間なので、複数のデータ(パケット)が、回線を効率的に共用できる。

問12.6. (ヒント)
  1. 100Mbps の通信回線でのインターネットパケットの送信時間を求めよ
  2. 1 パケット 0.05円 の携帯での、128MB データのパケット数と料金を求めよ

インターネット

インターネット

 インターネットは、
  1. ルータ(ゲートウェイ)と呼ばれる、LAN(ネットワーク)管理コンピュータ同士を回線で結んだネットワークである
  2. 通信を全体的に管理し責任を持つ組織を持たない、オープンなシステムである
  3. インターネット上のパケットは、参加する各ルータが隣接ルータへのデータ転送に責任を持つことによって、バケツリレー式に転送されてゆく
  4. 目的のルータまでは複数の経路が存在するので、何らかの障害でその一部が不通になっても、そこを迂回してパケットを届けることができる
  5. ルータは転送の際、そのパケットを見ることができる。葉書のように、その内容を(暗号化しない限り)盗み見られる可能性があることにも注意が必要である
問12.7. (ヒント)
  1. インターネットの特徴を述べよ
  2. インターネットでクレジットカード番号などの重要情報を暗号化せずに送ってはいけない理由を説明せよ
  3. https://・・・で始まるWebサイトの特徴を説明せよ

第5節 TCP/IP

 本節では、インターネット通信の仕組み(規約)について学ぶ。TCP や IP の P はプロトコル(Protocol、通信規約)の意味で、通信に関する取決め・約束を定める。送信者(プログラム)と受信者(プログラム)はこの規約に沿った手順で通信を行う。プロトコルはその役割が階層化されており、上位層のプロトコルは下位層の機能を利用して実現されている。
 IP(Internet Protocol)は、ネットワーク層のプロトコルで、以下に説明するIPアドレスを使って、パケットを宛先のコンピュータに届ける機能持つ。ただし、確実な配達は保証しない。
TCP/IP

IPアドレス

 IPでは、インタネットにつながる(原則)すべてのコンピュータにIPアドレスを割り振り、パケットの宛先に用いている。IPアドレス(IPv4)は 4 バイトデータで、例えば、110.111.112.113 のように、各桁(バイト)を 0~255 の数値で表す。
 インターネットにつながるパソコン(個々のコンピュータ)はまず、自分のLANのゲートウェイ(ルータ)に接続しなければならない。そのために必要なのが、デフォルトゲートウェイのIPアドレスである。
 LANのルータは、パケットを受け取ると、宛先(IPアドレス)が自分のLAN内にあるのか、そうでなければ隣接するどのルータに転送するのかを判断しなければならない。サブネットマスクは、例えば.IPアドレスが 110.111.112.113 でサブネットマスクが 255.255.255.0 なら、LAN内のIPアドレスは、110.112.113.0~110.112.113.255 の256通りであることを意味する。
 ところで、我々がインターネットのサイトにアクセスするとき、IPアドレスを直接記入することはせず、http://www.asahi.com のようなドメイン名を使う。これは人の分かり易さのためであるが、インターネット上では、ドメイン名をIPアドレスに変換しなければならない。その役割を果たすコンピュータをDNSサーバーという。シーマンのサイトでは「ドメイン/IP検索」ができる。

IPアドレスの枯渇

 IPv4の4バイトアドレスでは、最大4,294,967,296個のアドレスしかとれず不足している。実際、2011年4月にアジア太平洋地域の新規割り当て在庫が 0 になった。このため、次のよう対策が取られている。
  1. プライベートアドレス:LAN内でのみ有効でルータとの通信に使うアドレスで、直接外部と通信しないコンピュータに割り振る。
    10.*.*.*、172.16.*.*~172.31.*.*、192.168.*.*
  2. DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol):パソコンが、常に固定のIPアドレスを持つのではなく、インターネットアクセス時にDHCPサーバーから、IPアドレスを割り振ってもらう
  3. IPv6:16バイト長の次世代アドレス規格で、すでに運用が開始され、IPv4と併存している。セキュリティやリアルタイム通信の機能を標準搭載している。

*問12.8.210≒1000=103として計算せよ。 (ヒント)
  1. 4バイトのIPアドレス(IPv4)は全部でおおよそ何通りあるか。
  2. 16バイトのIPアドレス(IPv6)は全部でおおよそ何通りあるか。
  3. サブネットマスクは何に使われるか
  4. デフォルトゲートウェイとは何か
  5. DNSサーバーの役割は何か

TCP

 TCP(Transmission Control Protocol)はトランスポート層のプロトコルで、下位層の IP を使って、受信パケットから元のデータを組み立てたり、欠落パケットの再送を要求するなどして、データ(ファイル)の確実な送受信を実現する。それに対し、通信速度を重視して細かな確認・制御を省いたUDP(User Datagram Protocol)も使われている。
 インターンネット上では、Web閲覧以外にも、ファイル転送、メールなど様々なサービスが提供されている、これらのサービスを実現するアプリケーション層プロトコル(http, https, ftp, smtp等)は、それぞれ専用の(TCPやUDPの)ポート番号を用いて通信する。参考:主要なポート番号一覧

第6節 Webの仕組み

 World Wide Web(WWW)とはインターネット上でクライアント・サーバシステムに基づきWebサイトの閲覧を可能にする仕組みである。
 一般に、インターネットに繋がって何らかのサービスを提供するコンピュータをサーバ、そのサービスを利用するコンピュータ(やスマホ等)をクライアントといい、両者が一定の規約(プロトコル)にしたがって通信することによって、サービスの授受が行われる。
 Webサービスの場合、Webサーバとクライアントの間で通信する際に用いる規約をHTTP(Hyper Text Trasfer Protocol)、Webサーバからクライアントに送信される内容(Webページ)を記述する言語をHTML(Hyper Text Markup Language)、Webサーバと通信しHTMLで書かれた内容を解釈・表示する(クライアントの)アプリをブラウザという。ブラウザには、Internet Explorer, Google Chrome, FireFox, Safari等がよく知られている。
 Webサーバにアクセスすると、パソコン(クライアント)から送られる情報に基づいて、サーバからWebページの内容が送られる。基本的にこれらの情報から個人が特定されることはないが、位置情報の送信(サーバによる取得)許可には注意が必要である。

問12.9.ブラウザからWebサイトに送信される次の情報の値を調べその意味を述べよ (ヒント)
  1. IPアドレス
  2. ポート番号
  3. OS・ブラウザ情報
  4. 位置情報:どの程度正確か、調べよ